工場設備と複層ガラス
食品工場や水産加工場などの低温作業室と通路の間仕切りにのぞき窓がある場合、部屋と通路の温度差でのぞき窓のガラスが結露する場合があります。結露が発生すると、のぞき窓としての機能を果たせないばかりか、カビや害虫の発生原因になったり、場合によっては内装材の腐食の原因になったりもします。では、そもそも結露はなぜ発生するのでしょうか。
空気中には水分(水蒸気)が含まれています。湿度(相対湿度)○○%というのは、ある温度の空気中に含まれている水分の割合を示す値です。温度によって空気中に含むことの出来る水分量は異なっており、温度が低いほど含むことの出来る水分量は少なくなります。低温の作業場など、温度の低い部屋の冷たい空気がガラスを冷やすと、温度の高い部屋のガラス周辺の空気が冷やされます。冷やされた空気は、水分を含むことのできる量が減少するので、空気中に含むことが出来なくなった水分が水滴となってガラス面に付着します。これが結露です。では、ガラス面の結露を防ぐにはどうしたらよいでしょうか。
結露は、ガラスが冷やされることによって発生しますので、温度が高い方の部屋のガラス面が冷えないようにすれば良いということになります。しかし1枚のガラスでは冷たい空気がダイレクトに暖温側に伝わってしまいます。そこでガラスが直接冷たい空気に触れないように、間に空気などの層を設けて二重のガラス層にすれば、冷たい空気が暖温側に直接触れることを防ぐことが出来ます。つまりは複層ガラスです。複層ガラスは、ガラスとガラスの間に乾燥空気(空気も立派な断熱材です!)や熱を伝えにくいガス(アルゴンガスやクリプトンガスなど)の層(空気の層やガスの層を合わせて「中空層」と言います。この中空層の厚みを増やすことによっても、断熱効果を高めることができます※)を設けることによって冷気の伝導を抑えることができ、結露をある程度防ぐことができるのです。空気よりも断熱性の高いガスを封入したり、熱を反射する金属膜つきのガラス(これをLow-Eガラスといいます)を使用したり、あるいは中空層を何層も設けたりして、複層ガラスの断熱性能を高めることができます。
※厚さ13mmを超えると中空層内で対流が発生し、かえって断熱性能が落ちてしまいます。
しかし結露の条件は、実は室内の温度や湿度だけではなく、暖温側ガラス表面付近の空気の流れも関係しています。ガラス表面付近が無風の場合は、たとえ条件に合致したガラスを用意しても、結露する場合があるのです。逆にガラス表面の付近に絶えず空気の流動があれば、結露しにくくなるということもいえます。
このように結露が発生する条件には、さまざまな要素が組み合わさっています。熱が熱い側から冷たい側に流れるというのは自然現象であり、ガラスが冷やされて結露が発生するのはある意味仕方がないことなのです。そこで、ガラスが冷えないように、ヒーターを使ってガラスを強制的に暖めて結露を防ぐという方法を採ることがあります。これがヒーター入りガラス(サンワイズでは発熱ペアといいます)です。また、環境試験室などの、室内温度が変化する部屋の場合は、上昇する温度にガラスの表面温度がついていけず、ガラス面が結露してしまうことがあります。この場合には、可変する部屋側にもヒーターを入れて両面ヒーターにします。サンワイズでは、発熱ペアのガラス面に電気抵抗の高い金属膜がコーティングされたガラスを使い、金属面に通電して、その抵抗で熱を持つようにしています。金属膜はほぼ無色透明で、目障りなワイヤーなどは入っておりません。金属膜に通電をしていますので、膜面に触れられないように、必ず複層ガラスにして使用します。金属膜の厚みは一定ですので、電極間の距離によって抵抗値が変わり、必要な電圧が変わってきます。従って100Vや200Vといった電圧を直接かけることが出来ず、そのサイズに適した電源電圧をご用意いただくか、オプションのACパワーコントローラーやACアダプターを利用して頂いています。サンワイズの発熱ペアは、基本的な熱量を100W/uとして、必要な電源電圧またはACパワーコントローラーの設定をお知らせしています。
複層ガラスを使用することは、結露を防ぐ手段として広く普及していますが、欠点もあります。まず、複層ガラスのガラスとガラスの間の中空層は、スペーサーを挟んで保持しています。このスペーサーは、その加工性の良さから多くはアルミ製となっています。しかし、アルミは熱の伝導率が高く、せっかく断熱材でもある中空層でガラス間の縁を切ることが出来ても、スペーサー部分でつながってしまうため、スペーサー部分(ガラスの縁周り)は結露しやすい状態になってしまいます。そこでサンワイズでは発熱ペアも含め、ほとんどの複層ガラスで樹脂製のスペーサーを使用し、弱点であるスペーサー部分の断熱性も高めています。もうひとつは、複層ガラスを固定する枠の問題です。ガラスを複層ガラスにするなどして性能を高めても、ガラスを固定する枠が金属性で縁が切れていない場合、低温側のガラスよりも先に枠が結露してしまいます。また、壁よりもガラスが薄い場合は枠が壁側に入り込みます。この部分に空気が滞留し、滞留した空気がガラスで冷やされて結露を起こしやすくしたりするのです。これは枠の形状がテーパーでも同じことが言えます。
使用する室内外の温度、湿度の条件や、複層ガラスの種類(抜粋)とを入力すれば、複層ガラスの種類(使用するガラスの種類や中空層の厚さ、スペーサーの種類など)ごとに、ガラス面がどのように結露するかをサンワイズの公式ホームページの複層ガラスの商品案内にまとめてあります。また、このシミュレーションにない種類の複層ガラスでも、その複層ガラスの熱貫流率が分かれば、どのような条件で結露するかを調べることも可能です。サンワイズでは、複層ガラスと結露について、このように真剣に取り組んでいます。